あなたを好きでいたいよ

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窓から差し込む月光が震える背を照らしていた。 やがて月は、闇に隠れ・・・。 僕は、君へ手を伸ばす。 春の陽射しに包まれた神戸。 ポートライナーに乗りこむ日生克の姿があった。 東京からやってくる婚約者を迎えに彼は空港へ向かっていた。 流れゆく景色の中で空と海が混じり合う。 海面がキラキラと光を反射させ、神戸は関東に似た街だ。 この冬、二人組アイドルが遠距離恋愛の曲を出した。 歌詞の女性「君」は、船に乗り込む。 遠距離恋愛は、今時飛行機か新幹線だろうと思うのは、・・・ 自分自身も今まさに遠距離だから? (僕らは、婚約中だが) 目を閉じて…この数ヶ月を振り返る。 挨拶に行こうとする僕らに紫織のご両親は、頑なに会うことはなかった。 会うどころか、話しすらとりあってもらえず。 覚悟していたと言う紫織は、それでも寂しそうだった。 ・・・所詮僕は、他人だ。 紫織とご両親の間に立ち入る事はできないし、 どちらに苦言を呈することもできない。 それでも紫織の味方でいる事は、できる。 僕は、何があっても君と一緒だよと言うと彼女は嬉しそうに頷いた。 そうしている内に僕は、神戸へ。 紫織は、東京という生活が始まってしまった。
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