あなたを好きでいたいよ

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「ティファニーの一粒ダイヤのペンダントには、恋が叶う。 運命の人に会える、そんなジンクスがあったから捨てられなかったんだね」 「・・・・・・」 捨てたらヒナとのことも・・・。 なくなってしまうような、そんな気がして・・・。 怖かったの。 「これは、君に持っていてほしい」 「でもこれは、・・・」 昌行がわたしにくれたもので・・・。 「いいんだ。確かにそれは、僕が君に贈ったものじゃないけど、 僕が君と出会った日、君がつけていたものだから」 「!」 「だから捨てないで持っていてほしい」 「いいの? ・・・本当に・・・」 「うん」 思わず泣いてしまったわたしの後ろに、 ヒナが回ってペンダントをつけてくれた。 「つけれた? もう髪、おろして・・・」 無言のままふわりと抱きしめられ、首筋にキスが落ちる。 「いい歳の大人なのに・・・」 「え?」 「空港で君を抱きしめた時、・・・たまらなくなってた」 「・・・・・・ わたしも」 ひやりとまだ冷たい春の風が吹く。 室内へ入っても彼は、わたしの身体を離さない。 少しずつ降りる背中のファスナーの音には、甘い予感が孕んでいた・・・。 日が沈み、夜の帳は下りてきた。 外には夜景が広がっており、 室内に月の光が差し込んでいる。 暗がりに慣れた目には、均整のとれた男の体が浮かび上がり、 同じように眼前に晒している体は、熱を帯びてきていた。 東京から克が離れてまださほど経っていない。 少し、ほんの少し触れあっていないだけなのに・・・。 その胸に包まれてしまえば・・・。 唇が肌を掠めたなら甘く疼いてくる。 触れてしまったらもう我慢がきかなくて、 角度を変えては何度も何度も互いの口中を貪りあう。 下肢の中心は、熱を持ち涙を流しては彼を誘っている。 溺れている。 心も身体もこの人に・・・。
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