あなたを好きでいたいよ

7/58
前へ
/58ページ
次へ
「いつ来ても片付いてるね」 「ほとんど寮にいないから散らからないだけだよ」 「忙しい?」 「まあまあだね」 勝手知ったる彼氏と友人の部屋。 我が物顔で部屋を歩き、冷蔵庫へ行くと缶ビールを取り、 飲まない?と聞いてくる。 少しと前置きしてコップに注いでもらう。 リビングに腰を下ろし、膝を抱えて座り込んだ彼女が缶に口をつけると、 ビールを飲み下す喉に目を引き寄せられ、視線を逸らす。 「ねぇ、結婚って…どう思う?」 「え!?」 予想外の言葉に僕は、ビールを吹き出すところだった。 「そんな話、出てるのかい? 水臭いなぁ、二人とも」 「違う違う。出てない。聞いただけ!」 「なんだ、脅かさないでくれよ…」 「悪かったわね」 祝福しかけた僕に彼女は、拗ねたような瞳で僕を見る。 「そうだな。結婚といっても僕は、今年入社したばかりで、 貯金もまだそうないし、いずれしたいとは思ってるよ」 「ヒナは、男だし同じ22でも社歴も違うものねー」 紫織と昌行は、高卒入社だ。 大卒入社の僕とは、社歴が違う。 二人は、就職を機に地方から上京してきていて、 紫織の実家が自営業というのは、聞いて知っていた。 「(結婚)どうするか親から聞かれたの」 「君は?」 「え?」 「結婚したいと思ってるの? 昌行と」 「するなら昌行だけど、時期については…」 「もっと後ならいい?」 「うん。正直なところ今、仕事が面白くて。 昌行とは、忙しくてすれ違う事もあるし、もう少し後でも…」 「それならそれでいいんじゃない?  時期については、二人で話して決めたらいいよ」 「…そうよね。変なこと聞いてごめん」 「別に僕は…」 「なんかビール飲んだら、眠くなってきちゃったぁ」 言ってるそばから紫織は、欠伸し、僕にもたれかかってくる。
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!

78人が本棚に入れています
本棚に追加