あなたを好きでいたいよ

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「こらこら、ダメだよ! 待ってるんだろ?  それかちゃんと帰って自分の部屋で眠りなよ。 ここにいるだけでも規則違反なのに、泊めたなんてバレたら…」 両目を閉じて完全に寝てしまうまで二分とかからなかった。 なんて寝つきのいい子だ…。 「…はぁ、やれやれ。こんなところに寝かせて誰かにバレでもしたら大変だな」 眠ってしまった紫織に聞こえないだろうなと思いつつ、 「紫織、抱きかかえるよ?」 返事はなく、妹にもしたことないなと苦笑しながらお姫様抱っこする。 「悪いけど僕の部屋で寝てもらうよ」 特に抵抗もなく僕に運ばれる紫織をベッドへ連れて行き、 寝かせようとしたら、寝ているはずの彼女が、 腕を伸ばし、顔が引き寄せられた。 「!」 顔のすぐそばに紫織の匂い。 彼女に覆いかぶさってしまわないように体を浮かすけど、 首は、彼女の顔の横の枕に沈んで、がっちりホールドされて、 声も出せない状態だ。 首に彼女の息と、やわらかな唇の感触がかかって、 自身の男が刺激されていく…。 彼女の口から何か聞こえたと思ったら、顔を上げた瞬間。 僕の唇は、スタンプを押すように…。 彼女の唇の上に…落ちた。 驚きのあまり、声も出なかった。 「……」 僕は、口を手で押さえその場に座り込み、 紫織は、スウスウと寝息を立てて眠っている。 押さえた手に残ったのは、わずかに紫織の唇に残っていた、 ピンクベージュのリップだった…。
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