あなたを好きでいたいよ

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「……」 久しぶりに実家に帰ると妹達の様子がおかしい。 三人代わる代わる遠巻きに見ては、 何やらひそひそ話し。 あえて放っておいたら弟が来て、僕の腕のシャツを引っ張った。 「兄ちゃん」 「なんだい。悟くん」 歳の離れた弟は、この春中学生になった。(※双子が高校です) 僕の服を引っ張るのは、彼の癖で、 小さな頃からの名残だ。 「なんか、マズイもんでも食ったのか?」 「え?」 彼がそう言った瞬間。 聞いていた妹達がずっこける音がした。 「姉ちゃん達、兄ちゃんが変って。腹でも壊したのか?」 「いや平気だよ」 頭を撫でるとまっすぐに僕を見たまま彼は、続ける。 「だってさ、いつも姉ちゃん達も、おれもヤダヤダ言ってんのに、 帰ったら兄ちゃん、ぜってーハグしてくるじゃん?」 「…そ、そぉね」 いざ口にされると恥ずかしいな。 「暑苦しいけど、それがなかったら兄ちゃんじゃないみたいだぞ」 「…後ろの二人もこっちおいで」 じんとさせられながら、肩を震わせている姉妹を呼ぶと、 萌も若菜も僕らの方へやってくる。 「仕事で疲れてたんだ。心配させてごめんよ」 「…へーそうかそうか。仕事で疲れると兄貴は、抱きついて来なくなると…」 「新情報だ。メモっとこうぜ」 「え、君達? …兄サン、泣いちゃうヨ?」 「こらこら二人とも! もう安心したそばから」 二人の姉の萌は、たしなめながら僕に言う。 「何でもないならいいのよ。兄さん、寮生活はどう?」 「なかなかいいね」 「なぁなぁ、かわいい女子いたか?」 「はぁ? 男子寮だろ」 「近くに女子寮あるって聞いたぞ?」 「もう二人とも、いい加減になさい!」 うちは、相変わらずだなぁ…。
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