番長・バナナ

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「おう!毎度あり!一房98円だよ!」 徳助(のりすけ)はバナナを手に取ると そそくさとビニール袋に入れて 1人の客に渡した その客は100円玉を出し 「つりいい!」(お釣りは要らない) と言って、そそくさと去っていった それからも、見物人もとい買い物客達は バナナを買い求めて行き、中にはついでに野菜や果物を買って行く人もいる しかし流石は、ベテランの八百屋 徳助は手際良く捌いていく そうこうする内に、大量に仕入れた新鮮バナナの山はどんどん低くなった 「あらら、参ったねー、バナナが減ってきちゃったよ」 十子がそう言うと 「おばちゃん、奥に見切り品のバナナが有るんだろ?それ持ってきてくれねえか」 「おいどん、熟れたバナナもだいすきでゴワス!」 と、お互いに16房完食し、17房めに入っている大好と山敏が言った 「そうかい?なら持ってくるよ」 十子そうして奥に行き 見切り品になったバナナを箱いっぱいに持ち戻ってきて また平等に選別し、大好と山敏の近くに置いた その頃には、二人とも17房めを食べ終え 18房めに入っていた 相変わらず見事な食いっぷりな二人 すると 「おうおう!ここか?番長が大食いで鹿児島の番長と対決してるってのは!?」 そうして声を上げて現れたのは、虎之丞だ 「おー!ここだ!」 「番長すげー、バナナの皮があんなに有るじゃねえか!」 「いや、相手も負けてねえぞ」 一本木の後輩不良達もぞくぞくと集まってきた 更には 「東海林(とうかいりん)君の言う通りだったわ、天猪君って本当に面白い事するのね!」 あややまでデジカメ片手に現れた ジャッチ中の弥七郎は 『きっと誰かがSNSとかで話したのを聞きつけて来たんだな』 と感じていた そんな事を思っている最中にも 大好と山敏は食べ続けている 黒ずんだ熟れバナナに手をかけている2人は それを味わいながら 『熟れたバナナの軟さから来る喉越しは良いな』 『まるで飲み物でゴワス、やはり見切り品でもバナナは美味いでゴワス!』 と、心で言った そしてまたそれは、周りの人間にも 熟れたバナナの魅力を伝えていた 「徳さん、十(じゅっ)ちゃん、新バナナと一緒に熟れたのも頂戴!」 「あっ、うちも!うちも!」 「はいはいっー!ちょっと待ってねー!」 「順番に用意しますからねー!」 八百時計夫婦もなんだか気合が入っていた 商売始めてから、こんなに平日忙しかったのは何年ぶりだろう? 商売人として冥利に尽きると言う物だ
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