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「えーずるーい、私も聖君に何か買ってもらいたーい」
同じトーンでそれぞれ正反対のことを言う美雪と梓に聖は苦笑いを浮かべる。
「そーねぇ椿にはこれね」
美雪が椿も目をつけていた青い宝石のついた蝶のリングを手に取る。
「でも、それは――」
「ほら見て」
美雪は椿の左手を取り、その小指にリングをはめてみせた。
「まるで椿のためにあつらえたみたいじゃない」
白くて細長い椿の指にとまるその蝶は確かに美雪の言うとおり彼女のためだけにこの世に生を受けたようだった。
「確かにめっちゃ似合ってるわねぇ」
梓も同意する。
「あっでも私の指にも合うんじゃない?」
「あんたじゃ月とすっぽん、蝶にボンレスハムよ」
「そうそう、肉が食い込んでねって、誰の指がボンレスハムよ」
「おほほほほほ」
「椿、それにするかい?」
椿はじっと指輪を、指輪についたのその青い宝石を見つめて少しだけ考え込む。やがてこくりと無言で頷いた。はたから見たらそれは指輪と対話し了承を得たような光景だった。
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