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 冬馬がこの吹雪の原因を『氷角童子が生け贄を食いっぱぐれたせい』だと推測し、氷角童子を探しに行くと言い出して隆盛がそれを止めようとしたのだった。人知の及ばない危険な存在だからと。 「俺が見てくる、お前はここにいろ」  隆盛がそう念を押してから部屋を出ようとする。冬馬はこの期に及んで隆盛が自分を危険から遠ざけようとすることにムッとした。 「俺も行くよ」 「お前はここにいてくれ、安全か分からんし、それに風邪がぶり返しても知らんぞ」 「そんなの俺の勝手だろ。お前に俺の命までとやかく言われる筋合いはない。だいたい、ここにいて安全だって保証あんのかよ?」  隆盛は冬馬の顔を睨むように見下ろしながら逡巡する。冬馬には隆盛が何を考えているのか手に取るように分かった。冬馬をふん縛ってでもここに止まらせるのが安全なのか、はたまた自分の目の届く範囲に居らせる方が得策なのか考えているのだ。結局隆盛は、 「着いてくるなら絶対に俺から離れるなよ、いいな」  と告げて廊下に出た。冬馬も「知るかよ」などと悪態をつきながら廊下に出る。すでに消灯時間を過ぎていたが、昨日のこともあり防犯的な意味合いで廊下の電気は点いたままだった。時間が時間だけにみんな寝ていたのだろう、隆盛と冬馬の他すぐに部屋から廊下に飛び出してくる者はいない。  ドン――二発目の爆発音が響いた。真下から突き上げてくるような衝撃を感じる。     
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