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 やがて盛り上がった血がチョコファウンテンのように流れていくと、中から妖怪変化もかくや、杖を突いた老人が現れた。血だまりの中から現れたとしか見えないのに、何故か老人自身や纏っている浴衣には血が一切付着しておらず、相も変わらず枯れ果てた棒きれのような手足をプルプルと震わせている。 「童子よ童子、何故血を望む」 「じいさん、なんでそんなとこに、どうやって現れた」  奇術にしてもトリッキーでグロテスクな祖父の出現にさしもの氷角童子も唖然となっていた。老人は刃物で刻みつけたかのように深い顔の皺をより一層深くして、杖の先を氷角童子に向けて言い放つ。 「母の乳では腹満たされぬのか?」 「え? 椿がーー」
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