分岐の末の結末の一つ

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「後始末よろしく、ケンジくん。いちち、何本かいってるなこりゃ」  牧村は脇腹を押さえ、白に埋もれた藍青を後にすべく歩き始める。背にしたひび割れた氷河の塊、閉鎖病棟の中で何が起きたのか、そしてこれから何が起きるのか、牧村は知らないし知る術もなく、また知る気もなかった。ただ、また新たな快楽の種が、人の心を蝕み善人すらも化け物へと変えるような悲劇でも起こっていればいいなと、肩を震わせ、増すあばらの痛みに苦笑した。
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