21人が本棚に入れています
本棚に追加
/309ページ
思考するアメーバのようなとかく奇妙奇天烈な立場に立たされ、冬馬は思考し、思考する自分の周りを認識していた。
「痛いよぉ体ガァ――カダラガァ――」
膨張していく魂の中心、即ち冬馬が死んだ地点のすぐ側で、同じように死んでいった同級生たちの呻き声が聞こえる。
「金田、大丈夫か?」
冬馬が音無き声で訊ねて見るも、
「痛いよぉ体ガァ――カダラガァ――」
と案の定、永遠と同じ譫言を繰り返すのみだ。
彼らは思考する魂を持ち合わせていないらしい。というより、魂は疾うに拡散しその個体を識別できないほどに他の魂と混じり合って解けきっている。おそらくそれが成仏すると言うことなのだろう。ここにあるモノは分解できなかった魂の不純物がこの場にこびりついているだけのようだ。
「痛いよぉ体ガァ――カダラガァ――」
耳も目も塞ぐことができない。なぜならそんなもの、とっくにバラバラになって、後から来た何者かが回収して行ったのだから。なのに、松本冬馬と認識できる思考が消え失せること無く、いつ終わるともしれない同級生たちの嘆きを常に感じ続けている。
いや、同級生ばかりではない。今や冬馬の膨張する魂は藍青と呼ばれる街いっぱいにまで広がっており、その中で死んでいった者の嘆きや悲しみが、四方八方四六時中、冬馬の意識に流れ込んでくる。
最初のコメントを投稿しよう!