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「お前、こんな遠くから通ってるのか? どうりでいつも眠たそうな顔してると思った」 「この顔は生まれつきでして。それに普段は寮で寝泊りしてますから。ああそれより、なるべく俺の足跡にそってこっちに来てくださいよ」  鷹栖は無遠慮にぐきょぐきょ音を鳴らしてゲレンデに侵入しようとする新垣に進言した。 「あっすまねぇ。どうも雪の現場なんてのはな」  新垣は薄くなりかけた頭を掻きながら鷹栖の足跡にそったかなり大回りなルートで歩き始める。 「ここがか?」  鷹栖の隣にまで辿り着いた新垣は、雪の中にできた人の大きさほど窪んだところに目を落とし訊ねた。 「で、倒れたっていう……」 「全身刺青の女」 「そう、それは?」  新垣の問いかけに鷹栖は旅館の方を向いて答える。 「第一発見者の少年が旅館の中に運び込んだそうです。蘇生を試みようとして。結局ダメだったらしいですが」 「その少年の足跡がこれか」  旅館から真っ直ぐこの場に続く足跡がある。そしてもう一つ、 「それで、こっちが仏さんのか」  ゲレンデの上の方から下りてくる足跡があった。新垣は旅館の前にいる人間に大声で呼びかける。 「鑑識。何人かこの足跡追ってくれ。自分の足跡で消さないように気をつけろよ」 「わかってますよ。あっちの方がプロなんですから」 「そうか?」     
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