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 淳也は旅館の廊下を駆け抜け階段のところまで着くと壁を背にして息を弾ませる。 「はぁはぁ、焦った」  壁越しに後ろを振り返る。堤は追ってこない。だが時間の問題だ。どうせ退学は免れないだろう。どうせくだらねぇ人生だ。落ちるとこまで落ちてやんよ。俺の退学知ったらあいつらどんな顔すんだろ。それも女孕ませてさ。  淳也は怒髪天になって顔を赤くする両親の姿を想像し少しだけおかしくなった。淳也の両親は典型的なエリート思考の持ち主だった。特に父親は厳しく、勉強し、いい大学を出ていい会社に就職することがまっとうな人間の生きる道だと常々言っている。何かと優秀な兄と比べられていた。淳也は小中とお受験に失敗し、更に高校受験の時、第一志望の私立に落ちたときにはそれは酷く罵られた。なんとか都立の進学校に入学できたものの、次第に勉強について行けなくなり赤点を取るたびにごみくず扱いされた。  いっそ遠山殺すのもありかもな。センセーショナルだぜ。進学校の高校生が妊娠させた同級生の女を殺害。ネットニュースや週刊誌がいかにも食いつきそうなネタだ。俺と一緒にあいつらの人生も終わりにしてやんよ。 「くっくっくっ」     
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