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 氷室はベッドに寝かされている少女を見下ろし愕然となる。胸の内に冷たく眠らせていた十年前の罪が、心に張り巡らせた氷を突き破り目の前の少女と重なる。繰り返される罪。どこかで終わらさなければと思いつつも、決心がつく前にまた罪を犯せよと流れ作業のように運ばれてくる。  氷室は部屋の隅で頭を抱え苦しみ喘いでいる聖に目を向けた。聖の額には青いクリスタルのような角が生えている。氷角童子を模した面、そのものの姿がそこにあった。角は今もなお、ゆっくりだが確実に成長し続けている。見つけられぬ出口を探し続けることに耐えかね聖の額の皮膚を突き破り己の存在を誇示するかのようにむくむくと膨張していく。それもまた十年前と同じ光景であった。     
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