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ソウマトウ、そしてエピローグへ
魂が混じり合う。死者も生者も関係なく。
混じり合った魂が記憶を携えぐるぐる回る。車軸に捕らわれぐるぐる回る。
回り混じった記憶の芥は繊維の如く絡み合い形なす。
ぐるぐる回る度に大きさを増す記憶の塊。それはまるで一本の絵巻のように。
やがて大きくなりすぎた塊はこんがらがってぷつり止まる。
止まれば解かれまた最初から。
ぐるぐるぐるぐるぷっつんぐるぐる――終わること無いソウマトウ。
走馬灯はシビトの夢。
死ぬ直前だけではなく、死んだ後も永遠と見続ける夢。
死んでみて初めて知る。夢を見るのは躯では無く魂なのだと。
……ボーン――ボーン――ボーン―ボーン――
柱時計の時報が聞こえてくる。
「まただ……」
夢から覚めた冬馬は薄暗い旅館の納戸で空気を振動させることの無い声で呟いた。
自分の形を明確に捕らえることはできない。今、薄暗い旅館にいるという感覚も、視覚触覚聴覚味覚嗅覚、すべての五感を一緒くたにしたような、或いは全く別の感覚かもしれないが、生きていたときには味わえない形容しがたい感覚でそれらを認識している。自分自身が広がっている。認識できるものにはすべて自分の魂が染みこんでいる様な気がする。
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