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「ちょっと、奥さん」
見ると、隣に住んでいる女だった。
田舎はもともと近所の付き合いは盛んだが、彼女らは同じガーデニングという趣味を持っている事もあり、常々話題に困ったことはない。
「あら、奥さん。おはよう」
元気のない声で軽く挨拶する。
「あら、じゃないわよ。そっちもやられたみたいね」
「そっちも、ってこれ? じゃあ、お宅も?」
「そうなのよ。さっき見てみたら、根っこごと掘り返されてたわ」
「何なのかしら?」
「近所のいたずらっ子じゃないの?」
「それにしては悪質すぎるわよ。人の敷地まで入ってくるなんて」
「そうよねえ」
同じ被害に遭った人を知って安心すると、今度はふつふつと怒りが湧いてくる。
「わたし、ちょっと向かいの人に訊いてみるわ」
「待って、私も行く」
2人は類を求めて、数メートル先の家のベルを鳴らした。
「え、庭? ちょっと待ってて」
家人は慌てて庭の方へ走っていった。
だがすぐに戻ってきて、
「うちもやられてたわ。誰がこんなことを」
憤然として言った。
「もしかしたら他にも同じような家があるかもしれないわね」
「そうね、町長さんに相談してみましょうよ」
「警察が先じゃなくて?」
「ダメよ。ここの警察は頼りにならないもの。この前だって食い逃げを捕まえたってだけで1ヵ月ちかく自慢して回ってたんだから」
女は呆れたように言った。
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