04.怨煉

3/4
前へ
/15ページ
次へ
今から2時間ちょっと前。 私達は木塚荘温泉にチェックインしていた。 部屋は男女1部屋ずつ。1名追加も問題がなかった。 でも、問題はすぐに発生した。 部屋に荷物を置いていた時だった。 乱暴に扉が開かれたから、私達3人は短く悲鳴を上げた。 ヒロミ君達が青白い顔で入って来る。 「お、驚くなよ……と言っても、無理か……」 テレビのリモコンを操作する。 「嘘……」 私の口から零れた言葉。 画面の中には、ヒデキの顔写真。 夕方6時台のトップニュースでは、成田空港でのテロ事件の報道がされている。 犠牲者情報の中に、ヒデキが入っている。 所持したパスポートで身元を確認した上で報道しているとキャスターは伝えた。 「そんな……」 私はその場に座り込んだ。 涙は流れない。現実と認識できないから。 ただ、顔の神経と筋肉は不規則に動いている感があった。 私は震える手でスマホを操作する。 ヒデキの電話は電源が入っていないままだ。 思い悩んだが、ヒデキの自宅へ電話してみる。 「もしもし、ミサちゃん……」 私は彼のお母さんの声のトーンで、全てを理解して、とめどなく涙を流した。 ヒデキが死んだ。殺された。 現実に、ようやく思考が追いついた。 その思考を涙が、更に追い越していく。 だから、今ヒデキが私に連絡を寄越すはずはなかった。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加