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今から2時間ちょっと前。
私達は木塚荘温泉にチェックインしていた。
部屋は男女1部屋ずつ。1名追加も問題がなかった。
でも、問題はすぐに発生した。
部屋に荷物を置いていた時だった。
乱暴に扉が開かれたから、私達3人は短く悲鳴を上げた。
ヒロミ君達が青白い顔で入って来る。
「お、驚くなよ……と言っても、無理か……」
テレビのリモコンを操作する。
「嘘……」
私の口から零れた言葉。
画面の中には、ヒデキの顔写真。
夕方6時台のトップニュースでは、成田空港でのテロ事件の報道がされている。
犠牲者情報の中に、ヒデキが入っている。
所持したパスポートで身元を確認した上で報道しているとキャスターは伝えた。
「そんな……」
私はその場に座り込んだ。
涙は流れない。現実と認識できないから。
ただ、顔の神経と筋肉は不規則に動いている感があった。
私は震える手でスマホを操作する。
ヒデキの電話は電源が入っていないままだ。
思い悩んだが、ヒデキの自宅へ電話してみる。
「もしもし、ミサちゃん……」
私は彼のお母さんの声のトーンで、全てを理解して、とめどなく涙を流した。
ヒデキが死んだ。殺された。
現実に、ようやく思考が追いついた。
その思考を涙が、更に追い越していく。
だから、今ヒデキが私に連絡を寄越すはずはなかった。
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