03.淵漣

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私達が目指しているのは、崖だった。 吉良監督の遺作となった『淵漣(えんれん)物語~7人ミサキ~』のロケ地。 車内で誰かのお腹の虫が鳴いたので、私達は昼食をとることにした。 グルメサイトを検索すると、絶景スポットのカフェレストランがあった。 「崖の上に立つ絶景カフェだって!パスタとかもあるから、良くない?」 カフェレストランはすぐに見つかった。 「凄いな……崖に立つ処か、崖から飛び出してるんじゃないか?」 「映える~」 皆、口々に興奮しながら店内に入る。 遅めのランチタイムだが、待っているグループが何組かあり、人気店だと分かる。 3方ガラス張りの店内を支えるX型の筋交(ブレース)と天井梁。 硬質なウッドフロア。 クルーズ船のようでもあり、洋上に居る錯覚を覚える。 日替わりのリゾットとパスタを3つずつオーダーし、シェアする。 ブツ切りの地元野菜を使った美味しい料理。 温暖な気候だから、地物野菜はよく育っている。 そして、ジャンボパフェ。 40cmはあろうかという難敵を前に、私達は、男子チームにも援軍を要請した。 「うわ、マジか。もう学生じゃないんだから、こんなに喰いきれねえよ」 「見ただけで、もうお腹いっぱい」 「割り勘で払ってやるから、ベツバラで頑張れよ」 あえなく、男性陣は戦意喪失。 こんな時、ヒデキが居ればな……。 あいつ、甘いの好きだからな……。 定位置だったはずの隣を見る。サキと目が合う。 目が合ったサキは、グッとガッツポーズをとる。 多分、頑張って食べようね!と間違ったメッセージを受け取ったんだろう。 反対側を振り返る。 ガラス張りの絶景の先は、土佐湾の碧い水平線。 黒潮っていうから黒い海かと想ってた。 遠くに見えるのは、カツオ漁船かホエールウォッチング船か分からない。
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