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私達は、ランチをとりながら、監督の遺作について語り合い始めた。
淵漣物語~7人ミサキ~。
映画談義の殆どは、学生時代の話の焼き直しであり、蒸し返しであった。
「亡霊も怖いけどさ、やっぱり生きてる人間の方が怖い作品だったよね」
「村人同士が疑心暗鬼になって、殺しあっちゃうもんね」
「どうして、吉良監督は『7人ミサキ』を遺作に選んだんだろうね」
「評論家内でも永遠のミステリーらしいよ。寧ろ小津よりクロサワに近い」
「幼い頃から記憶に在って、死の前に撮りたかったんじゃないの?」
「四国では、7人ミサキ・7人同行・7人童子とか同様の話があるらしいから」
ヒロミ君の考察で一時、中断となった。
私は『四国』という広い密室に閉じ込められ、逃げられなくなったような不安感を覚えた。
もうすぐ逢えるはずなのに、何故か胸騒ぎがして落ち着かない。
淵漣。
淵に起こった漣。
心に漣が立つなんて、監督の遺作に想いを巡らせすぎたのかも知れない。
「そういえば、お前らって、3人揃うとミサキだよな?」
「え?」
想わず、我に返った。
「ミサとサキとミキ。こわっ」
「もう、ミサとサキだけでもミサキじゃん。ミキは関係ないし」
ミキが脱退を表明した。
「ヒデキが合流したら、7人ミサキ、なんちゃって」
「ゴロウ君、シャレにならないって」
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