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それまでの関係のままで居るように見えて、互いが互いを思いやるばかりに、皆、家から遠のいていく現実。
父は桂佐と会う日は外で会い、家で二人の姿を見ることがなくなり、桂佐は父が帰って来ない内に陽和の様子を見に来ては、父と会う時間になると帰って行った。
そして陽和は、二人をそんな状態にしてしまった罪悪感に駆られ、自己嫌悪で自身を苛み、あまり家に居なくなった。友人の家に泊まって勉強すると言っては、ゲーセンやカラオケ店で時間を潰す毎日。
そんな頃、たまたま行った繁華街で緑都に捕まってしまう。
向かいから来る大学生らしい賑やかな団体を避け切れず、その中の一人と肩がぶつかった。謝ろうと振り返った瞬間、強い力で肩を掴まれる。
「お前、玄の従弟じゃね?」
「あ」
呆然と見上げた顔は、怒っていた。そんなに強くぶつけただろうかと焦りつつ、掴まれた肩から手を解こうともがく。
「葉笠ぁ、そんなガキにからむなよぉ」
連れの数人が、冗談めかした忠告を緑都に飛ばして来る。
「ごめんなさい。よそ見してたから」
「そんな事はイイんだよ。お前何してんの? こんな所で一人」
怒った顔は一向に柔らかくならない。少し冷たくさえ感じる緑都の瞳に、自分の視線も定まらず、うろうろと彷徨わせてしまう。
時間はとっくに明日を越え、今日の時間になってから数時間が過ぎていた。
「親、知ってんのか」
親と言われて、最近は見る事が無くなった父と桂佐の二人が、意識の奥底で霞のように微笑んでいた。
「……」
「知るわけねぇよな。知ってたらこんな時間に中学生一人、外出なんてさせるか」
陽和と緑都を不思議そうに見ながらも、先を急かす友人達に、緑都は「今日はパス」と断りだけ入れて、陽和を引き摺って行く。
自分のせいで、友人との先約をキャンセルになんてされたくない。
「ちょっ! 僕のことは良いから行きなよ」
「ホントのバカじゃないだろうな、お前。誰がこんな繁華街にガキ一人残してくんだよ」
「だって、関係ないっ」
言った瞬間に、今度はハッキリと睨まれた。
「そんなに遊びたきゃ、もっと良い所に連れてってやるよ」
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