単なる好奇心と暇つぶし

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単なる好奇心と暇つぶし

「キャア~。助けて。」  常人には聞こえないが、俺には確かに聞こえた。  歳の頃は十代後半の若い女の悲鳴。美声でもある。  助ける義理はないが、そのまま見過ごすのも目覚めが悪くなる。  どうせ、このまま帰っても暇だし、俺は、その現場に足音を消して 急行した。 「おい、おまえ、ちゃんと押さえろ。」 「へい、兄貴。合点です。」  案の定、ガラの悪い二人組が若いセーラ服の女の子を地面に抑え込んで、良からぬことをしようとしていた。  俺には、夕暮れのうす暗い闇に、乱れたスカートの中の女の子の長くて白い生足がはっきりと見える。 「誰か~。助けてえ~。」 「誰も来やしねえよ。大人しくしな。」  確かにこんな荒れ果てたお寺の境内には誰も来ないだろう。  うっそうと森が茂り、オバケが出そうで気味が悪いもんな。  俺は笑いたいのをこらえ、気配を消して二人組に忍び寄った。  俺は隠形術と暗視術には自信がある。 「神様、助けて下さい。」  悔しくて悲しくて怖くて涙を流していた女の子は、瞳を閉じて、心の中でお祈りしていたが、異変を感じて瞳を開けた。  そこで見た物は、眠れる森の野獣2匹だった。  まあ俺にすればいくら良からぬことに夢中になっているとは言え、野獣どころか虫けらにすぎない。  楽勝だ。 「ええっ。」  慌てて衣服の乱れを直して、俺の存在を確認した。  そして、ポッと赤くなった。無理もない。大抵の女の子は俺の外見に騙される。俺は自分で言うのもなんだけど、結構イケメンだ。 「あのう、もしかして助けていただいたりして。」 「礼はいらないよ。単なる好奇心、自分勝手な暇つぶしだから。じゃあ、俺はこれで。」 「ちょっと、待ってください。お名前を聞かせて下さい。」 「名乗るほどの者じゃない。じゃあ。」 「待ってください。」 「うぜえ。まだ、あるのかい。」 「足をくじいてしまいました。歩けません。」 「あちゃあ~、ややこしやあ~だな。」 「・・・・・・・」  良く見ると、良家のお嬢様を絵に描いたような美少女だった。  それだからではないが、涙目で必死に訴える女の子をそのままにしておくわけにはいかない。 「ほらよ。」  俺は、その女の子に背中を見せた。 「何ですか。」 「オンブだよ。まさか、お姫様だっこをしろとか言わないよな。」 「言いません。でも。」  どうやら、恥ずかしがっているらしい。どんだけのお嬢様だ。
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