山人王の依頼は超危険

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「闇夜の飛翔王たちよ。力を貸してくれ。」  俺は猛スピードで落下しながら、島に住んである動物たちに心から誠心誠意、呼びかけた。でないと、いくら俺でもこのまま地面に叩きつけられ、あの世行きだからね。  すると、俺の心を込めた呼びかけに答えて、オオコウモリの大群がバサバサと飛んできてくれた。そして、ステルス戦闘機のような形に固まってくれたので、俺はその上に胡坐をかいて座った。これも、尾上一族の力だ。  ちなみに、オオコウモリは翼を広げると2m に達するが、見かけによらず果実や花蜜など植物質を主食としている。 「すまねえ。恩にきるぜ。じゃあ、あの基地の裏の森まで送ってくれや。」  オオコウモリたちは笑って答えてくれた。 「ありがとう。元気でな。」  森まで送ってもらった俺は、見えなくなるまで手を振り、見送った。  ぶっちゃけ、尾上一族の血を呪ったこともあるけど、これは悪くない。 「さてと、行きますか。」  俺は、もう一度装備を確認して、基地に忍び込む手はずを考えていると、 すぐに有り難いおもてなしがやってきやがった。  闇に光る金色の瞳が二個セットで、十か。俺が逃げられないように鳴き声を出さずに包囲網を敷くところを見ると、かなり訓練されているな。  実際、それは軍用犬、ドーベルマン10匹だった。ドーベルマンほど飼い主の性格に似る犬はいない。冷酷無比、残忍で血に飢えた顔をしてやがる。 「やるってのかい。俺は別にいいけど、後で泣いてあやまっても知らねえぞ。焼いて喰ってやる。これが、本当のホットドッグだ。」  俺のアメリカンジョークに、そいつらは顔色を変えた。こいつらは知能も高いし、敵の戦力を冷静に分析できる。俺の鼻はよく効く。こいつらが、ガチでビビって冷汗をかいているのがわかった。  それでも、リーダーらしき一番体がデカく毛並みが良いのが俺の前に立ち、闘いを挑んできた。 「いいねえ。男はそうでなくっちゃ。ほら、こいよ。ここをガブッとしな。」  俺の挑発に乗ったそいつが、すかさず俺の喉元目掛けて飛び掛かって来た。ドーベルマンのくせにフェイントを交え飛燕みたいだが、俺には通じない。 ズバッ  俺は、発達した牙が閉じられる前に、手刀を口の中に突き入れ、そのまま脳を貫通させた。片手でおよそ50kgの死の痙攣をしているやつを残りのやつらの前に投げ出してやった。 「刺身でもいいなあ。」  俺は右手についた血と脳漿を美味そうに舐めながら言ったとたん、やつらは文字通り尻尾を巻いて逃げ出した。速いのなんのって笑ってしまう。  そう、それが賢明。長生きする秘訣だね。だって、俺は狂い狼、残酷皇子、 ワンマン・アミーなど幾つも通り名を持っているが、その正体は人の皮を被った狼だからな。犬なんか相手にならないくらい、強いから。
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