69人が本棚に入れています
本棚に追加
/509ページ
「お呼びでしょうか。」
「よく来たな。まあ、そこに座れ。話は後じゃ。これを食べるがよい。」
それは、三重県の名物、赤福餅であった。お餅にこし餡をのせただけではない。形は伊勢神宮神域を流れる五十鈴川のせせらぎをかたどり、餅に付けた三筋の形は清流、白いお餅は川底の小石を表わしている。それだけではない、赤心慶福から名前をとったとってもありがたい餅菓子である。
「へえ~、これは珍しい。誰か伊勢神宮にでも行ったの。」
「日本橋に三重テラスものなる施設があるのじゃ。そこでは、三重の伝統、文化、歴史、食、風土など様々な魅力を伝える商品を売っておる。」
「それは知らなかった。でも、ありがてえ。東京で赤福餅が食えるなんて、何て幸せなんだ。」
「そうじゃろう、そうじゃろう。」
俺と爺さんは暫く口福、幸福の時を一緒に過ごした。
「それで、今度はどんな仕事だい。」
「それが、ワシのまったくもって個人的な頼みなのじゃ。もちろん、謝礼は弾ませてもらう。」
今まで国際問題にまで発展しかねない国際的レベルの仕事だっただけに、珍しい。興味津々、全身耳ダンボと化した俺に、爺さんは仕事の内容を詳しく話すのであった。
最初のコメントを投稿しよう!