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俺はモスカイザーの背中に乗って基地の中心部に向かった。これが、結構快適なんだな。帰ったら、爺さんだけに話してやろう。きっと、うらやましがるに違いない。
「ようこそ、この私の研究所へ無事にたどり着けた者は坊やが初めてよ。褒めてあげる。」
そこで待ち構えていたのは、白衣の銀縁眼鏡の熟女だった。変に色気があるから、美魔女と言えなくもないけど、俺の守備範囲ではないぞ。
「褒めても何も出ねえぞ。オバサン。」
「まあ、この私に向かって何ということを。マサチューセッツ工科大学理学部を首席で卒業し、アメリカ軍にスカウトされ、数々の研究開発を行い、今最もノーベル賞に近い科学者と絶賛されているこの私、セドナ・ホワイトを知らないなんて。やっぱり、東洋の猿ね。」
俺だって、マサチューセッツ工科大学が、アメリカ合衆国マサチューセッツ州ケンブリッジに本部を置く私立工科大学であることは知っている。通称はMIT。全米屈指のエリート名門校の1つとされ、ノーベル賞受賞者を多数輩出している。2014年までの間に1年以上在籍しMITが公式発表したノーベル賞受賞者は81名で、この数はハーバード大学の公式発表受賞者48名を上回る。
しかし、この女のことは表舞台に出ることはなく、山人王の爺さんの情報網でもその正体がぼんやりとしかつかめない人物だった。
「オバサンのことはどうでもいいから、このクローンマンモスことモスカイザーの待遇改善を要求する。」
ドスーン ズシーン パオ~ン
モスカイザーはここぞとばかりに、鼻を天高く振り上げ、足踏みをする。
「オバサン、オバサンって言うな。モルモットは所詮使い捨て、消耗品よ。待遇改善いたしませんってか。そもそも私は定時に帰るタイプなので、坊やのせいで深夜過重労働よ。」
この野郎、どや顔でほざきやがる。日本のドラマオタクをひけらかす以前に、かなり性格悪いな。
「おい、モスカイザー。どうする。こう言ってるぞ。」
「シカタナイゾウ。こうなったら、ジツリョクコウシダ。」
「ほいきた。」
俺はモスカイザーの背中から飛び降りた。
バオオ~ン
モスカイザーが生意気なオバサンを半分本気で襲おうとしたが、不思議なことに途中で動きが止まった。
「おい、どうした。」
「・・・・・・・」
俺が呼び掛けても返事をしない。いや、返事すらできない様子で、全身から冷汗と脂汗の匂いがした。よく見ると、瞳から血の涙を流している。
「貴様、何をした。」
「言ったはずよ。モルモットは使い捨てだって。」
「それは、いいから説明しろ。」
「東洋の猿にわかりやすく説明してあげる。こんなこともあるかと、心臓にリモコン式スタンガンを埋め込んでおいたの。最大出力一億ボルト、今はほんの1000万ボルトよ。私って、スゴイでしょう。」
「今すぐ止めろ。さもないと、お仕置きだけではすまないぞ。」
俺は怒りに髪の毛が逆立ちそうになった。
「まあ、怖い。でも、できるかしら。やってみそ。」
今どき、日本の名古屋人でも言わないギャグで返しやがる。その余裕は一体何かと思ったら、奥の部屋から姿を現す者がいた。
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