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目を覚ますと、俺はベッドの中にいた。背中の傷の手当てもされている。一体、いつのまに、誰がと考える俺のそばで三輪が俺の顔を心配そうに眺めていることに、気が付いた。
「良かった。もう、このまま眼を覚まさないかと心配しちゃった。」
俺の返事を待たずに、胸に飛び込んでくる。
「痛ててて。」
「あつ、ごめん。傷にひびくの。」
「まあね。」
本当はめっちゃ痛い。普通の人間なら、発狂するだろうよ。
「ねえ、牛肉とか買ってきたんだけど食べる。」
「食べる、食べる。」
俺は、ベッドからガバッと起き上がった。前に、俺は不覚にも敵に胸をレーザー光線で撃ち抜かれ、命の危険にさらされた時も、三輪に頼んで牛肉を買ってきてもらったことがあった。
今回も、三輪が保冷バックから取り出した血もしたたる生のステーキに、喰らいつく。1kg、3OOO円なり。一言もしゃべらず、発達した歯で噛みちぎり、噛みつぶし、飲み込む。あっという間に、2kgを胃袋に収めた。そんな俺を見つめる三輪の眼には、俺が本物の狼に見えたに違いない。そして、三輪の瞳は愛する者に尽くせる喜びに満ち溢れていた。
「生卵もあるんだけど。」
「気が利くね。もらうよ。」
俺は三輪が買ってきた烏骨鶏の生卵6個を、瞬く間に飲み干した。
「ふう、落ち着いたよ。三輪、本当にありがとう。感謝している。」
俺は三輪の瞳を真心込めて、真正面からじっと見つめる。
「本当、じゃあ、言葉だけじゃなくて態度で示して欲しいんだけど。」
三輪が恥ずかしそうに斜め45度で見上げてくる。超可愛いんだけど。
俺は、三輪の肩を抱き、伊勢の旅館での続きをしようかなって思ったときに、ドアをノックする音がした。
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