遺産相続問題で燃える

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 俺が美汐、美帆親子の部屋に行っている頃、泰山天一郎のホテルTAIZANの総本部では親族一同による緊急会議が行われていた。鷹野優斗も、その場に出席させられていた。議長を務めるのは、天一郎が最も信頼し、息子のようにかわいがっていた甥の泰山天鳳(てんおう)である。  隠し子の存在も天一郎の側近のごく一部しか知らされていなかったのに、その隠し子が4人もいたから、会議は最初から荒れるのは必至だ。その上、理事会の承諾なしに、遺産総額300億円のホテル王と言われる天一郎の後継者を料理勝負などという全くもって意味不明なことで決めようとしたことも、激しく追及された。会議は紛糾、沸騰したものの、結局、天一郎の後継者が決まらなかったことより、誰が天一郎を殺したのか、どこのどいつがホテルTAIZAN一族に喧嘩を売ったのかが、最大の論点となった。考えてみればホテル界の山賊王と呼ばれた天一郎の親族一同、熱く燃える漢たち、もっともな話である。  外部者の鷹野優斗だけは、そうなるように会議を持って行った天鳳の意識操作の見事さと、何より親族一同は最初から天一郎の後継者は天鳳しかいないと思っていることに気づいていた。鷹野優斗の眼から見ても、齢53にしては若く見えるほど精力に満ち溢れ、鋭い眼光の中にも深い慈愛を秘めている漢(おとこ)、水滸伝の天魁星、宋江を地で行けると思えた。  
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