基地に潜入したら

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「別れは済みましたか。」 「すまねえ。中断しちまったな。」  俺が背中を向けているときも律儀に待っていてくれたリュウ・ヒカルと再びび対峙した。 「流石ですね。闘いが始まってから背中を向けていたので攻撃しようと思いましたが、隙がありませんでした。」 「そっちこそ、それがわかるとはたいしたもんだ。さあ、とっとと終わらせようか。」  俺は言い出した手前、今度は自分から間合いを詰めた。まるで散歩に出かけ、友人に出くわしたように実に自然にね。 「こ、これは。」  リュウ・ヒカルは額から冷や汗を流したが、即座に決断して、同じように間合いを詰めてきた。俺たちは接近し、何事もなかったようにすれ違ったが、お互い凄まじい攻防があった。そう、俺が使った技は、ご先祖様が琉球に仕事で出向いたときにパクってきた琉球王国の王家に伝わる秘伝武術、本部御殿手の歩法と捌きの絶技であった。  それにしても、リュウ・ヒカルは凄い。並みの男なら、為す術もなく俺に倒されるか、攻撃して俺にカウンター攻撃を受け、ダウンするのにね。 「もしかして八卦掌を修行しましたか。」 「いいや、やったことねえよ。」 「そうですか、では今度は私から。」  リュウ・ヒカルは俺の周りをゆっくり歩き始めたが、その速度はドンドン速くなり、ついに残像ができその数は4人となった。 「光龍拳秘技、死天抜倒。(しってんばっとう)」  四人のリュウ・ヒカルが俺を襲ってきた。龍の牙に無残に打ち砕かれる狼かと思いきや、そうは問屋がおろさない。 「大神流奥義、護狼陣(ごろうじん)」  五人の俺が立ち向かう。  ズバン バシッ ザクッ バキッ ドガーン  お互いの秘技と奥義が交差し、絡み合い、弾けるように離れた。  まともではないが俺は腹に一発もらったが、お返しに顔面に一発クリーンヒットしてやったもんね。  鼻血を手でぬぐったリュウ・ヒカルの表情はめっちゃ険しい。 「子供だましの技は通用しないようですね。次の秘技で絶対に倒します。」 「へえ、それは楽しみだね。」  リュウ・ヒカルは奇妙な舞を始めた。俺にはわかる。みるみるリュウ・ヒカルの気が眩しいほど高まり、それは龍の形と成る。  俺も負けてはいられない。 「臨兵闘者皆陣列在前」  俺は刀印で横5本、縦4本に宙を切る九字を行った。そして精神を極限まで集中し、蔵王権現の祝詞を唱える。大神流は修験道と根源は同じだ。武の達人が観れば、俺の背中に憤怒の形相の蔵王権現が観えるだろうよ。 「光龍拳究極秘技、千光破那毘(せんこうはなび)」 「大神流秘奥義、霞雲啄狗(かうんたっく)」  リュウ・ヒカルの手足が千手千足観音のよう増え、それぞれが牙を持つ龍のように電光石火の速度で俺の全身の急所に襲い掛かる。  俺はそのすべての攻撃にカウンターを合わした。これが、どんなに難しいことで、凄まじい破壊力を生み出すかわかってもらいたいものだ。 「無念・・・・」  ボコボコでボロボロになったリュウ・ヒカルは、心底悔しそうにつぶやき、床に倒れた。                  
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