爺さんの最終依頼の謎

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爺さんの最終依頼の謎

「来、来ないで。」  俺の親友、モスカイザーを殺した女を許すわけにはいかない。  俺は静かに近づく。 「それ以上近付くと撃つわよ。」  オバサンは護身用の銃を取り出し、震える腕で構える。 「どうぞ。撃ちたかったら撃てば~。」 「Fuckathon!」  俺の蔑む目にキレたオバサンは、汚いスラングを吐き、引き金を引いた。 バーン  オバサンにしてはなかなかの腕前だが、俺は簡単によける。  銃は、S&WのM&Pシリーズと見た。サムセイフティなしで、暗い場所でも狙いやすいトリチウム・ナイトサイトを装備している。アメリカでは近年ポピュラーな銃だね。  マニュアルセイフティが無い銃なので安全に扱うためには日常的なトレーニングが必要だけど、コンパクトで軽量なため女性にも扱いやすいと言える。 「確かに一秒を争う状況で操作性の悪いセイフティは邪魔になることがあるので、安全性はトレーニングでカバーすることが必要なんだけど、オバサン、悪魔の研究が忙しくてさぼってるね。」 「うるさい、オバサン、オバサンて言うな。これでも、言い寄ってくる男は 星の数ほどいたのよ。」 バーン バーン バーン バーン バーン バーン  そんなこと聞いてないし。ヒステリックに装弾数7発を全部撃ち尽くしたが、俺にはかすりもしない。これも尾上一族のDNAに刻まれた力による術だ。敵の気、体、銃を神速で読み、銃弾をかわす。ちなみに、白い光をかわすと、後から来る本物の銃弾をかわしている。 「だから、俺には銃は通用しないってばよ。」 「お願い、許して。何でもするから。命だけは、お願い。」  オバサンは、本物の悪魔を見るような目で俺に許しを請うが、俺の怒りは収まらない。お仕置きどころではすまないからな。大神流は、経絡秘孔の研究を数多くの実戦と人体実験で極めている。一時的に体の自由を奪う技もあれば、三年殺しのような遅延性の必殺技も存在する。 「さて、どの経絡秘孔を突き、どんな目にあわしてやろうかな。」  俺は静かな怒りに燃えていた。それが余計相手に恐怖を与えるんだな。  あまりの恐怖に、オバサンは気を失った。 「何だい、面白くねえ。」  気絶した女をいたぶる趣味はない。さて、どうしたものかと思案していたら、スマホが鳴った。爺さんからだった。どうやら、胸のペンダントに仕込まれた小型カメラで状況を判断したらしい。 「そこまでじゃ。流石、ワシが見込んだ大神流後継者。お見事。」 「お世辞はいいから、この女、どうしたらいいのか教えてくれや。」  実は俺、爺さんから最終的な仕事の内容を聞いていなかった。小笠原諸島の外れにあり、日本とアメリカの微妙な国境の境に位置するこの島に侵入し、敵の基地兼研究所を破壊するところまでしか聞いていなかった。最終的な仕事の内容は、その時になったら連絡すると言われていた。 「それはじゃ・・・」  俺はスマホに耳をくっつけた。全身ダンボと化す。
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