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太平洋に朝日が昇る頃、林さんが小型ヘリで迎えに来てくれた。
「ご苦労様でした。ご無事で何よりです。」
「心配してくれて、おおきによ。」
航空自衛隊、第1空挺団の元エリートにそう言ってもらえると、俺も嬉しくなる。つい、幼い頃住んでいた奈良県の方言が出てしまった。
「はい。」
「ありがとうって言ったんだよ。」
「いいえ、どういたしまして。」
「ところで、林さん。今回の爺さんの仕事の最終目的を知ってるのかい。」
「いいえ、そこまでは聞いておりません。」
「じゃあ、どこまでよ。」
「この島に潜入して、基地を破壊することまでしか教えられておりません。」
「ふう~ん。」
俺はヘリの窓に頬杖をついて、大きなため息をついた。
クローンマンモスのモスカイザーの話も、爺さんの最終依頼があのオバサンのスマホの電話番号とメルアドを聞き出すことだったとも、断じて言えない。
いかなる場合もクライアントに依頼された仕事の内容を他人に話してはいけない、守秘義務、いや尾上一族の掟とも言える。
まあ、帰ったら、爺さんに詳しく聞き出そう。嫌な予感がするけどね。
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