スイスの雪山でバーベガジと闘うなんて

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「俺、推参。待たせたな。」  巨大な氷の剣を片手に現れた俺を見る地獄のサタンのメンバーは、もう驚かなかった。いや、今日一日で一生分、驚いたのかもしれない。 「そ、それは。」  巨大バーベガジだけは、この剣の正体を見破り、恐れながらも、叫ぶ。 「我らを、我らで斬るつもりか。無理。」 「俺、兜割りも得意なんだよね。」  「最後の剣客」として有名な榊原鍵吉は直心影流特有の巨大な振り棒によって鍛えられた豪腕で、激烈な太刀を打ち込み、1887年(明治20年)、天覧のもと行われた「兜割り」を成功させた。  文字通り鉄兜を鉄の刀で斬るという荒技で、見事に兜に斬り込みを入れ、その力を広く知らしめたのである。 「兜割り、知らない。カブトムシ、酒に入れて飲むのか。」  同じ人間でも、国が違うと、文化の違いがある。ましてや、人間とバーベガジ、違いすぎる。お互い知らないことが多いだろう。 「飲まない。そんなことより、行くぞ。」  俺は面倒くさくなって、大刀を両手で振り上げながら、天高くジャンプし、脳天目掛けて振り下ろした。 「余裕。」  巨大バーベガジは余裕でかわす。だが、次の瞬間、激しい苦痛を感じた。 「大神流奥義 猛虎飛燕斬」  かわされるやいなや、大刀の軌道が燕のように変化して、股間を襲ったのだ。この地球上に生きる生物の雄共通の急所である。油断した巨大バーベガジはあわや切断の危機だったが、かろうじて切断だけは免れた。 「ここ、ダメ。卑怯。」  股間を押さえながら、俺を罵るが、闘いに卑怯もラッキョウもない。 「大神流奥義 破邪剣龍」  俺は大刀を千変万化、縦横無尽に操り、動きが鈍くなっている巨大バーベガジの手足に重い斬撃を加える。きっと、俺が巨大な剣の化け物に見えたに違いない。為す術もなく地面に倒れた巨大バーベガジの脳天を、額の角もろとも、真向両断に斬る。トドメだ。 ギエエエエエエ~  俺の斬撃は、巨大バーベガジの脳天から顎まできれいに断ち切った。額の角も同様である。天にも昇るくらい超気持ちいいんだけど、残心を忘れない。  巨大バーベガジはピクリとも動かず、やがて溶け始め、蒸発し、宙に消えてなくなると思いきや、突然現れた何者かの口の中に吸い込まれるのであった。
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