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「ワシじゃ。お主に仕事を依頼したい。」
電話の声は、葛城聖宝斎の爺さんだった。
「お安い御用だ。」
俺は待ってましたとばかりに喜んだが、仕事の内容を聞いて絶句した。
とりあえず、仕事を受けるにあたって、詳しい情報を集めるために、教えられた病院に向かった。東京でも一、二を争う大病院、名前はあえて言うまい。
外科病棟にある超豪華個室の一つに向かった。
「あった。」
その個室に掲げられた名前は、林 虎牙(こうが)。今は、爺さんの可愛い孫娘、葛城三輪の運転手兼護衛役をやっている。
「俺だ、入るぜ。」
ノックをしてから足を踏み入れた俺は、言葉を失った。東京タワーくらいの高さからパラシュートが開かず、飛び降りても平気な狂ってる隊とも言われる第1空挺団の元エリートの林さんが全身創痍の痛々しい姿でベッドの上にいた。柔道、剣道、空手合わせて軽く十段は超えるし、自衛隊独自の格闘術の達人の林さんをここまでボコボコにするとは、信じられない思いだ。
「怪我は大丈夫かい。これ、食べて元気出してくれや。」
俺は、枕元に都内の有名なケーキ屋キルフェボン青山で買ってきた人気ナンバー1のフルーツタルトの箱を置いた。林さん、執事に教えてもらったんだけど、意外と甘党だったのである。
「これは、尾上様。わざわざお見舞いありがとうございます。」
「俺の方が年下だ。皇君でいいぜ。それより、詳しく話してくれや。」
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