世界の正義の挑戦

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「はい、昨夜のことです。お嬢様を日本舞踊のお稽古場までお迎えに行った時の帰り道なんですが、突然、私たちの車の前に全身を黒いフードで覆った大きな影が空から降ってきたように現れました。慌ててブレーキを踏みましたが、間に合わず、はねてしまったと思いきや、その大きな黒影は左手一本で車を止めたのです。私でも、あれは無理ですね。私は車から飛び降り、「何の用だ。」と声を掛けました。もちろん、自然体ですが、警戒を怠ることはありません。そしたら、『葛城三輪さんに用がある。人質になってもらう。』と、流暢な英語でしゃべったんです。」 「林さん、英語わかるんだ。すげえ、尊敬するよ。」 「仕事柄、前のですが、やむを得ずです。私なんかより、三輪お嬢様は小学校三年生の時に英検三級に合格されたんですよ。今では、何と・・」 「わかった、話すすめて。」 「はい、それで私は断りました。もちろん、英語で。」 「ちょっと、林さん。俺が英語苦手だろうって眼で笑ってない。」 「いいえ、それより、話をすすめます。大きな黒影は、大笑いし、手で私に かかってこいとジャスチャーするんですよ。」 「わあ~、それ、俺でもわかるし、むかつく。それで。」 「はい、ここでなめられたら、元の古巣の連中にも顔向けできません。気合を込めて、水月目掛けて、正拳を叩き込みました。顔面は身長差があるのでね。あの感触、固い鉄じゃなく、野球の硬式ボールを殴った感じでしたね。「そんだけ~。」と英語で馬鹿にするので、正拳三連突きから、金的蹴りとつなぎましたが、まったく効果なし。打撃技はあきらめて、左膝を真横から蹴ってから、奥襟をとるとき、左手の親指でのどを突きながら背負い投げをかけましたが、地に根が生えたようにびくともしません。逆に、私の首を後ろから締めながら、担ぎ上げるんですよ。ピンチはチャンス。私は、後ろ手でフードを引っ張って、後頭部で顔面に頭突きをくらわしました。」 「ほう、それで。」 「まったく効き目はなかったんですが、フードの下の顔を見ることができました。それが、何と・・・・。」 林さんは、そこで一旦言葉を切った。 「もう、じらすなよ。」 俺はそう言ってみたものの、林さんの瞳に恐怖を見た。
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