世界の正義の挑戦

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「それがアメリカヒグマ、グリズリーだったのです。クマの顔した人間が流暢な英語を話す。アメリカのコミックではなく、ホラーでした。只でさえ、襲われて怖いのに、そんなの見てお嬢様は気絶なされました。」 「そりゃあ、そうだろうよ。でもさ、自衛隊の最終兵器、サイレント・タイガーと呼ばれている林さんなら、平気でしょ。」  俺は、ちょっとだけだぞ、三輪さんのその時感じた恐怖を考え、心配になった。トラクマじゃない、トラウマにならなければいいな。 「まあ、私も、公にはできませんが、訓練で日本のヒグマはサバイバルナイフを使って倒したことはありますが、このクマ男に比べれば、子どもでした。」 「ところで、クマ男って、特撮に出てくる改造人間みたいのかい。」 「私も気になって、聞いてみたんです。そしたら、何とあんな日本の子供向けの特撮に出てくる改造人間なんかと一緒にするなってエライ剣幕で怒るんですよ。自分は遺伝子工学が生み出したバイオ戦士だと自慢気に語るんですね。英語でね。」 「バイオ戦士ってか・・・・。」 俺は嫌な予感がした。この前、クローンマンモスを見たばかりだからね。 「改造人間など所詮強化義肢を身につけた人間にすぎない。定期的にメンテナンスが必要だし、誤作動を起こしやすく、壊れることもあると。その点、自分は究極の完全なる生物であると、ドヤ顔でした。」 「見たくないなあ~。それで。」  それだけの英語の会話をしたと、林さんもドヤ顔だったが、スルーする。 「私も、そんな敵なら手加減はいらないと、特注の強化ゴム弾銃を取り出し、至近距離で顔面目掛けて撃ったんです。」 「ゴム弾銃って、警察や軍隊が使うもので、当たりどころが悪ければ死に至るってやつだろう。そんなの持ってるのかい。林さん、怖いな。」 「茶化さないで下さい。ここからが、肝心なのです。クマ男、図体がでかいくせに一発目は左手で余裕で受けたんです。恐ろしいほどの動体視力だったのですが、流石に痛かったらしく、その後の銃弾は全てかわしたのです。まるで、ダンスを踊るかのように。弾を撃ち尽くした後は、情けないことにこのザマです。殺すことは簡単だけど、メッセンジャーとして生かしてやる。そう言って、お嬢様を連れ去りました。消え去りそうな意識の中で、悔しくて、辛くてたまりませんでした。」 「林さんの気持ちはわかる。仇は、俺が必ずとるから。」  俺は、林さんの手を握りしめたものの、疑問がわいていた。  グリズリーは、木登りも水泳も得意で、最大時速65kmで走るものもいるけど、銃弾をかわすなんて信じられない。ドーピングをやっている可能性もあるな。
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