世界の正義の挑戦

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 その後、林さんからクマ男の俺に当てたメッセージを聞き取った。  要点は、全部で五点。 1、こちらの指定する場所へ時間通り来ること。   勝負の結果にかかわらず、三輪お嬢さんは速やかに解放する。 2、警察へは知らせるな。   これは、日本の総理大臣とアメリカ大統領の間で、話はついてる。 3、助太刀を十人までなら頼んでもかまわない。   別に何人でもかまわないけど、大量虐殺は避けたい。   自分は、誇り高き戦士であって、断じてテロリストではないと。 4、重火器、武器の使用を、許可してやる。自分は、あくまで素手でやると。 5、見届け役は、両国に中立の立場のスイスに頼んであると。  やはり、敵は世界の正義、全ての面で世界一を自負するアメリカだった。  むかつくほど上から目線のメッセージだが、闘いはすでに始まっている。  ここで、カッカと怒っては駄目だ。かの有名な剣豪、宮本武蔵の教えにもあるが、相手をむかつかせ、平常心を失わせることは重要である。  俺は、病院を出た後、近くの公園に行き、周囲を確認してから、爺さんにスマホで電話した。これでも、クライアントとのホウレンソウを大切にする主義だ。企業でも、上司への報告、連絡、相談って大切だろう。  それから、俺は公園のベンチに寝転がった。今日は、あいにくの曇り空だ。俺の心模様を表わしているなんてね。  スイスって国は永世中立国を宣言しているけど、正規軍を持ち、国民皆兵制をとり、有事の際には48時間以内に60万人の兵士を動員できる体制にあるんだぞ。そんな国が、見届け役か。微妙だね。  それより、クマ男の所属する組織の上司、そのまた上の大統領も馬鹿ではあるまい。爺さんの眼に入れても痛くないほど可愛い孫娘に危害を加えればどうなるかわかっているだろうから、その点は心配ない。今頃、アメリカ大使館の貴賓室で、皇族なみのおもてなしを受けているだろうよ。  しかし、問題は、俺がクマ男を倒したとしても、約束通り、冷静に三輪さんを返してくれるかどうかだ。一抹の不安が残る。 「約束は破るためにあるからな。闘いに卑怯もクソもないよな。」  俺は幼い頃から。あのクソ親父から聞かされ、耳タコだ。 「そうは思わないかい。そこのお嬢さんじゃなくて、お姉さん。」  俺は背後で気配を完全に消し、秘かに聞き耳をたてている謎の美女に声を掛けた。  
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