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「いたぞ、こっちだ。」
その声に全員が殺到するが、そこで見た風景に固まった。すでに、三人が斬られ、文字通り、リアルで大きな血の海ができている。木刀、鉄パイプ、金属バットが寂しく濡れている。全員、顔が真っ青になって震え出すのは、無理もない話だな。
「どうした、もう終わりか。かかって来ぬか。」
コスプレ野郎らしき侍姿の男の声に、誰も応じない。これだけの敵を目の前に、堂々と落ち着いた凛とした声が境内に響き渡る。何故か、大刀は持っていないが、その小太刀での青眼の構え、剣気、位はかなりの達人だ。こりゃあ、本物の侍だね。間違いない。
もっと言えば、長い黒髪を無造作に頭の後ろで縛った若くてかなりのイケメンだ。その瞳、こういうのを涼しい瞳と言うんだろうな。
さて、こいつらだって、馬鹿じゃないから、自分たちが瞬殺されるのがわかる。命だって惜しい。当たり前だな。どうなるかと見守っていたら、あのゴリラ男が安物のトカレフを持ち出してきた。正直、お世辞にも構えが様になっていない。腰が据わってないし、なんせ銃口が震えている。
「喰らいやがれ。」
バーン
自分を奮い立たせるようにトカレフを撃ったが、狙いは大きく外れ、後ろの樹に当たったみたいだ。
「ほう、種子島か。面白い。さあ、もう一度よく狙って撃て。目にものを見せて進ぜよう。」
侍は、ゴリラ男が外さないように間合いを自ら詰めた。その侍のプレッシャーに押しつぶされ、ゴリラ男は悲鳴をあげながらトカレフを撃ったのであった。
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