ガンジズ河の流れに

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 ガンジス河の大いなる意志、俺にとっては龍神様だけど、交信できた感動と知りたい情報をゲットできた喜びで、俺は感無量であった。そこに林さんはつけこんできたではないか。 「尾上様、ガンジス河の余韻にひたりながら、目の前に広がる「不浄の地」も鑑賞しながら、ホテルに戻ったらどうですか。ほら、ちょうどあの火葬場からほのかな煙がゆらゆらと立ち上っていますよ。」  この野郎、女と二人っきりになりたいばかりか、この女のポルシェを俺のトランクスにしみ込んだ河の水で汚したくないと思っているな。はっきり言えばいいのに、コンチクショウめ。ここで断るのも大人げないし、応援したい気持ちもあるから、俺は従うことにした。  ブラブラ歩きながらホテルに戻ろうとしたら、やっぱ観光客とみなされ、物売りやサイクルリキシャー、物乞いに絡まれる。「最高の死に場所」は観光客にとって「最悪の場所」である現実に引き戻された。  しかし最初の時に比べ、「これが人間、これが人生。国が違えば、みんな違ってそれでいい。」などと、口ずさむ余裕もある。  でも、浮かれてばかりもいられない。俺は爺さんに頼まれた仕事を果たすべく、秘策を練っていた。
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