お伊勢参りと恋のバトル

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お伊勢参りと恋のバトル

 インドから日本に帰った俺は、林さんには悪いが、三輪との仲は急接近で順調だった。お互いコクってはないけど、実質付き合っていると言えよう。  一方、林さんはサラのことを今だにひきずっていた。惚れた女にコクって振られれば気持ちの整理は時間がかかってもできるが、相手は神が憑依していて、しかもその神が超極上の美神だったんだから。気持ちはわかるような気がする。林さん、暇さえあれば神社仏閣巡りに勤しんでいる。そう、弁財天に絞っているんだよな。見ていて、何か涙が出そうになる。 「ねえ、そんなに美しい女の子だったの。」 「う~ん、確かに典型的なインド美人で今どきの女子大生だったかな。しかも、日本のアニメにも詳しく秋葉原にも何度か来たことがあるみたい。」 「ふ~ん、それで皇君は、好きにならなかったの。」 「なるわけないじゃん。俺は三輪一筋だから。」  実際、三輪の存在があったからこそ、俺は破壊神シヴァの禁断の魔の手と弁財天ことサラスヴァティーの甘い誘惑から逃れることができたのだから。 「まあ、それって私のこと大好きってことなのよね。」 「いいや、それほどでも。」 「何よ、男らしくない。はっきり、言いなさいよ。」 「嫌だね~。」 「もう~、怒るわよ。」  俺たちが三輪の屋敷の応接室のソファでいちゃついていると、林さんがうらやましげで恨めしそうな表情で後ろに立っているのに気付いた。 「尾上様、山人王様がお呼びです。」 「はい、了解です。」  俺は慌ててソファから立ち上がり、三輪にもみくちゃにされた衣服を改めた。その間、林さんの冷たい視線が突き刺さる。俺、本気で爺さんに自衛隊員だけでなく独身男性の婚活に力を貸すように頼もうと思ったよ。
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