基地に潜入したら

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基地に潜入したら

「楽しい~。」  俺がこの島に潜入したのはとうにばれている。俺は、基地の真正面から強行突破することにした。赤外線センサー、レーザー光線、数々のトラップなどを気にしてチマチマ進むのは面倒くさくなったので、先ほど仕留めた兵士たちの重火器を持ち込み、思う存分使った。  ドドドド ババババ  ドカアーン ズガガガーン  今どきの重火器の性能、破壊力は格段に進化している。種子島を最新兵器と崇め奉った奴らに見せてやりたいものだ。反撃がほとんどないのは、物足りないけどね。 「おやっ。」  聴覚も発達している俺は基地の奥からとてつもなく大きく重くて全身が毛でおおわれた生物が俺に向かってゆっくり歩んでくる音を聞き取った。  期待感がハンパなく膨れ上がる。そして現れたものは、巨大な全身が長い毛でおおわれていて氷河時代の地球に王者として君臨したが謎の原因によって絶滅し、現代ではお目にかかることができないはずの生物。  そう、牙の長さが5mを超えるマンモスであった。 「こいつが爺さんの言っていたクローンか。」  クローン技術により恐竜を現代に復活させるアメリカの映画は見たことがあるが、実際にその手のものを見るのは初めてで興奮する。これが仕事ではなく私生活なら、写メを撮ってインスタにあげたいくらいだ。 「それにしてもよく完全なるDNAを持つ凍りつけのマンモスが見つかったもんだな。」  俺は、そっちの方が気になった。  俺が首をかしげているそんな様子を防犯カメラで見た敵の首謀者が館内放送で俺に話しかけてきた。女の声だが、年齢は若くないとみた。 「尾上皇君でしたか。我が国が誇る最新科学が生み出したマンモスは、どうですか。おや、感嘆のあまり、言葉を失いましたか。それとも、恐怖心で声が出ないとか。」  口調はあくまで丁寧だが、口元に笑みを浮かべ挑発しているのがわかる。  俺の名前を知っているお前の国の情報局の力は、褒めてやろう。 「ウザい。後でお尻を思いっきり引っ叩いてやるからな。」  断っておくが、スカートの上からだぞ。俺はこう見えても紳士だ。 「まあ、噂通りお下品なこと。それより、寝言は寝てから言ってもらいたいものですね。さあ、モスカイザー、その生意気な坊やを優しく念入りに踏みつぶしてあげなさい。」  このマンモスのネーミングもイマイチだし、俺のことを坊や扱いしたことは絶対に許せねえ。俺は言葉にできないお仕置きをあれやこれや心の中で思い浮かべていた。 「オマエ、オモシロイゾウ。オレサマヲマエニシテ、ニヤニヤワラッテイル。  ヨホドジシンガアルノカ、ソレトモタダノバカカ。」  驚いたことにマンモスの方から、俺に話しかけてきた。 「馬鹿とはひどいな。この生意気な女をどうやってお仕置きしてやろうか考えていたところだ。」 「ソレワカル。オレサマモアノオンナハキライダゾウ。オレサマヲウミダシタコトヲオンニキセル。オレサマハ、タノンダオボエハナイ。」 「そうだよな。こんな現代に一人で生きても楽しくないわな。」 「オマエ、ハナシガワカルゾウ。アノオンナ、コレデモカッテ、ジブンノウデヲジマンスル。ウンザリスル。」 「大変だな。他にもあるだろう。」 「ソウ、ソレダケデナイゾウ。ジユウヲウバイ、イロイロカラダヲイジクリマワシ、ソノクセショクジハマンゾクニアタエテクレナイ。」 「それは酷い。酷すぎる。俺が代わりに文句を言ってやるぞ。」 「ソウカ、ソウシテクレルカ。デハ、タノムゾウ。」  マンモスはヒョイと長い鼻でおれをつかみ背中に乗せてくれた。  これも尾上一族の力。意識しなくても、敵の生物を味方にしてしまう。親友になってしまうんだな。  俺は、きっと人類で最初にクローンマンモスの背中に乗った男と歴史や科学の教科書に載るかもしれないなどと馬鹿なことを考えていた。  しかし、俺は尾上一族。歴史の闇に生きることを生まれる前から定められている。宿命ってやつだ。だから、この世の表舞台に立つことは決してない。 「おい、こら。モスカイザー。何やってるの。遊んでないで、早くやっつけなさい。」  館内放送でかなりヒステリックに女が叫んだが、俺たちは馬の耳に念仏と 決め込んだ。
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