雪の女王、光臨する

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雪の女王、光臨する

「おい、そこの若者。お主、中々、やるではないか。褒めて遣わす。」  その謎の人物は、真っ白な防寒着を着たクソ地味な女性で、洞窟の中の氷の檻の中に捕まっていながら、何故か気品があるというか、毅然としているというか、とにかく気になる存在だった。 「お褒めの言葉を頂き、ありがとうございます。ところで、貴女様のお名前を是非お聞かせください。さぞや、名のあるお方なのでしょう。」  俺は、この女性がドSの女王様タイプと判断して、丁重に扱うことにした。何せ、巨大バーベガジの霊気を一瞬で飲み込んだ相手だからな。 「オホホホ、やはり、わかるか。黙っていても、わらわから滲み出るオーラでわかってしまうのか。面白いものを見せてくれたお礼に教えてやろう。わらわは、雪女。美雪妃じゃ。」 「・・・・・・」~「・・・・・・・」。    その言葉に、俺だけでなく、地獄のサタンのメンバー全員が凍り付いた。一難去って、また一難。今日は、悪夢記念日だ。無事帰れたら、お祓いをしてもらおうと思ったに違いない。 「信じられないようじゃな。無理もあるまい。わらわのような高貴の者が、下々の前に姿を現わすことは、まずないからのう。どうれ、サービスじゃ。」    雪女の美雪妃が微笑み、白鳥の湖の様に華麗に優雅に一回転すると、そこに白装束の雪女の姿が現れた。長い黒髪で真っ赤な口紅の若くて美しい女性だった。細めだが、スタイル抜群である。想像していたのより、高級そうな真っ白な着物を着ている。そんなことより、全身からの圧が違う。目に見えない吹雪のようだ。気の弱い者は、心臓が停まりそうになるであろう。地獄のサタンのメンバーは、その点大丈夫だが、ヤバイ。  それより、いくら軍人とは言えども男に変わりない。この世の者ではない美貌を誇る雪女の美しく冷たい瞳に見つめられると、心を奪われてしまう。 「美雪紀様。」    地獄のサタンのほとんどのメンバーが、駆け寄り、ひざまずいた。ラウリン軍曹なんか、もう女神を見つめる表情だった。美雪妃がウインクと投げキッスを送ると、全員、胸を押さえて意識を失ったのである。
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