剣豪たちがやって来た

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剣豪たちがやって来た

 長かった夏休みも無事終わり、俺も日常生活に無事戻ることができた。  結局、三輪との心の絆は深まったものの、体の関係は進展がなかった。  休み時間、クラスの連中はそっち方面の話で盛り上がっている。三輪車って、一体何やねん。今どきの高校生は進んでいるんだなあとつくづく思った。それにくらべ、俺たちはというより、俺は何なんだろうな。やっぱ、大神一族、暗殺者なので堅気の一般人との恋愛に躊躇するところがあるのかもしれない。まあ、それはそれでしかたないとして、あせらず、たゆまず、地道に努力しようなんてね。  事件が起きす、刺激がない平凡な日常生活ほど、退屈なものはない。俺は、退屈をかみ殺すような欠伸をしながら、残暑厳しい日の夕方、下校するのであったが・・・。 「殺気。一人、いや・・・・二人か。」  気配は隠しているものの、時折漏れる殺気は並みの者なら心臓が止まるくらい激しいものだが、俺は、嬉しくて、嬉しくてたまらない。自分でも、ちょっと危ない性(さが)だと思う。  俺は、どこか適当な所を探して、遊んでもらおうと思ったが、中々見つからない。そんで、しかたなく、高校近くの再開発で解体中のビルの工事現場に誘い込んだ。生徒指導の先生からは、危険なので立ち入り禁止と夏休みが始まる前に指導を受けたから、覚えていたんだな。 「さてと、そこの人たち、何か御用ですか。」  工事現場の中央に立ち止まり、後ろを振り返って、聞いたんだけど、すぐに返事はなかった。驚いたような気は、感じた。 「おまえ、我らの気配を感知していたのか。」  居場所がわからないように、実に見事に声をかけてきた。 「いや、気配は非常にわかりにくかったんだけど、時折、漏れる殺気に気づきました。」  俺は正直に答えたんだけど、またもや驚いたような気を感じる。 「おまえ、一体、何者だ。只の高校生にしては、カンが良いというか、肝が据わっている。」  また、別の場所から声が聞こえてきた。 「人に尋ねる前に、自分から名乗るのが、礼儀なんじゃない。そうか、そんなこともできないから、殺るまえに殺気を漏らしてしまうんだ。ザコッ。」 「こやつ、言わしておけば。」「よせっ。」  今にも、襲い掛からんとしたが、仲間に止められた様子だ。面白くないな。 「ねえっ、オジサンたち、早く姿を見せてよ。遊んでくれるんでしょう。それとも、意気地なし。体の真ん中にぶら下がっているのは、只の飾りなの。」  恋する乙女、いや遊び慣れている女の逆ナンで訴えたら、明らかに激怒する気を感じた。やっぱ、男は、そうじゃなくっちゃ。 「その若さで死に急ぐこともあるまい。そこまで愚弄されたら、我らも黙っておれぬ。よかろう、お見せしよう。」  二人の男が姿を現わしたのであった。    
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