狼をなめるなよ

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狼をなめるなよ

その夜はまた別の件で、大変だった。三輪が心配だから泊っていくと言ってきかないのを、ご丁寧にお断りして、執事と一緒に帰ってもらったのたのである。  クラスメートで自称モテ男が、嫌がる女の服を脱がせるのより、嫌がる女に服を着せる方が、よっぽど難しいとのたまっていたが、その時は鼻でフンと思ったが、何だかわかるような気がする。  俺だって、健全なる高校生男子。そこいらの撮影会モデルなんかよりきれいな女子高生と一晩過ごしたいのは、本心だ。  しかし、ナイチンゲール症候群、看護師が患者へのケアをしているとき、恋愛、性的感情を持ってしまうことにつけこむようで、俺のプライドが許さない。誘うなら、健康で万全な状態で、未成年だから、もちろんシラフでやってやる。  その話はさておき、俺は遅い夕食をとった。冷凍庫に保存している握り飯を全部、鍋に入れ、そこへ鯖缶ともやし一袋を全部ぶちまけ、数分、煮る。それを、ドンブリに移し、その上に納豆と生卵3個を乗せて、醤油を数滴たらして、できあがりっと。  体力を回復するのにはそれだけでは足りないので、冷蔵庫に買い置きの牛肉のブロックを台所のガスコンロで直火で焼き、塩コショウをぶっかけて喰らいつく。俺的には、焼肉のたれより、こっちの方が、肉本来の旨みを味わえるから、好きだ。  デザートは冷凍庫に買いおきの6本入りの三種類のチョコのアイスクリーム一箱全部だ。一息ついてから、俺は爺さんに今日のことを報告し、調査をお願いして、一度電話を切った。  流石、爺さん、すぐに返事が来た。恐ろしいほどの、情報網、情報収集力だね。爺さんこと、葛城 聖宝斎は、役小角の末裔だ。真言密教の奥義を究め、大峰山の奥駆けを再興した高僧、聖宝の生まれ変わりと言われるほどの神通力を誇る修験道の巨星。その力は政財界全てにおよび、時の総理大臣をはるかにしのぐ。日本を陰から操ると言っても良いだろう。 「なるほど、そういうことか。」  俺は、狼の誇りにかけ、復讐に燃えるリベンジャーと化す。先祖代々伝わる闇のルートで、闘いの準備を整えてから、眠りについた。
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