感傷に浸る資格も暇もなく

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感傷に浸る資格も暇もなく

 結局、放課後の裏庭の爆発は第二次世界大戦、太平洋戦争の東京大空襲で落とされた不発弾が何らかの衝撃で爆発したことと処理された。そうなるように、爺さんが裏で手をまわしてくれたのもあるが、ちょうど、沖縄のサトウキビ畑で不発弾が発見されたのが良かったのかもしれない。  リオン先生も、韓国の実家で不幸があり急遽帰ったことにされていた。何も知らない生徒、先生たちは悲しむ、悲しむ。特に指導教官の蔵久博士先生の落ち込みようは酷く、「俺の恋は終わった。もう二度と恋なんかしない。結婚しない。」とのたまい、ラヴ・イズ・オーヴァー(LOVE IS OVER)、台湾出身の歌手、欧陽菲菲の日本における欧陽菲菲の代表曲を授業中歌い出すものだから、みんなドン引きしたのは言うまでもない。 「結婚できないの間違いだろう。」  リオン先生の突然の帰国の真相を知る俺は、そっと呟く。  しかし、感傷に浸る資格もないし、そんな暇もない。  爺さんから、次の仕事が舞い込んだのであった。
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