ガンジズ河の流れに

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ガンジズ河の流れに

「おうちに帰りたい・・・・。」  日本から遠く離れたインドの聖なる河ガンジスのほとりにある街バラナシで、俺はガラにもなくセンチになっていた。林さんも同じ想いだろう。東京の繁華街も人が多いが、ここは次元が違う、人の密度が濃すぎる。バラナシの人口は1000万人らしいが、インド全土から人が集まるため、とにかく人が多い、犬や牛などの動物も、そしてゴミが多い。まさに、カオスだ。任務とはいえ、とんでもないところへ来てしまった。  ヒンドウー教徒にとって「最高の死に場所」であるバラナシは、観光客にとって最悪なことを知った。駅に着いた途端、物売りに囲まれる。振り切って、道を歩けば、「ヤスイヨ、ヤスイヨ。」と調子のいい顔の濃い男にカタコトの日本語で絡まれる。それも振り切ると、今度は「バクシーン」だ。つまり、「お恵みを。」と物乞いに声をかけられる。メンドイ。  精神的に疲れた俺たちは、リキシャー(自転車人力車)を捕まえて、ヴィシュワナート寺院を目指すことにした。それでも、「オレノシッテイルミヤゲモノヤニイコウ。ヤスイヨ。」と言われるが、俺は知らんふりを決め込んだ。  それにしても、ガンジス河沿いには「ガート」と呼ばれる階段が多いのに驚いた。そこは、沐浴場、洗濯場やらになっているが、俺は遠慮したい。  そして、ヴィシュワナート寺院に向かってまるで迷路ような混沌としたびっしりと立ち並ぶ商店街を抜けて、やっと着いた。そしたら、乗る前に30ルビーと確認したはずなのに、降りるときに30ドルと言われ、いい加減ブチ切れそうになったが、ここで面倒を起こすと今後の任務に支障をきたす。俺は、20ドルだけ払った。後で聞くと、林さんはすんなり30ドル払ったらしい。まあ、スポンサーは爺さんだからな。      
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