破壊神光臨する

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破壊神光臨する

 インドにおける草木も眠る丑三つ時、俺は今は亡き暗黒四天王の親玉.教祖がいる教団に忍び込んでいた。歴史がありそうな古めかしい寺院のくせにどうしてなかなか最新の防犯設備を整えている。面白え~。俺は慎重に防犯システムをかいくぐり、寝ずの番をしている教徒の監視の目をすり抜け、教祖が寝ている寝室へと足を進める。  薄暗い豪華な内装の寝室に教祖はスヤスヤと眠っている。狸寝入りではないことを確認した俺は、手甲に隠し持っている棒手裏剣を取り出し、暗殺すべくベッドに近づく。異変に気付いたが、0.05秒遅かった。教祖がパチリと目を覚ますと同時に、俺は教祖のベッドのシーツに絡み取られた。ごく普通の薄いシーツなのにまったく身動きが取れない。俺は芋虫と化して、床に転がる。 「くそう~。かっこ悪いじゃねえか。」 「無駄じゃ。私の気が込められているからのう。」  教祖がベッドから立ち上がる。なかなかの風格。正中線が天と地をまっすぐ貫いている。後光がさして見えるのは気のせいじゃないよな。 「そんなことより、俺の姿が見えるのか。」  俺は防刃&防弾&衝撃吸収&超光学迷彩服を着ているので、姿は絶対に見えないはずだ。 「見えなくても感じる。体温と心臓の鼓動、刹那の殺意をな。」  教祖の額に聖なる光が見えた。こいつ、チャクラ全開だな。 「すげえ~、ガラガラヘビ並みだね。」  俺は、潔く姿を現した。 「ほう、想像していたのと違い、若くてイケメンではないか。」 「褒めてくれてありがとう。お礼に、苦しまないようにあの世に送ってやるよ。」 「この状態で、そう言うか。面白い、明日ゆっくり話をしよう。色々聞きたいことがあるからのう。今日は、寝させてくれ。睡眠不足は美貌の天敵だからな。誰か、誰かおるか。」  教祖の呼びかけにすぐに警備の教徒が三人駆けつけ、俺をシーツのまま担ぎ上げ、地下の牢屋に閉じ込めた。  冷たい床に転がされた俺はシーツに残された教祖の体臭をかぎ、ガンジス河から教えられていたことを、確信した。  教祖は女性であることを。
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