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担当から聞いた住所を見て文字だけだとピンと来なかったが、実際にその場に着いて驚いた。
景色は昔とさほど変わらず、家も昔のまんまだった。
「本当にここが依頼の家なのか……?」
間違いの方が俺にとっても、この家の住人にとっても良いんじゃないかと思えた。
それに、問題のある客と言われると、ある女の顔が浮かび上がる。思い出したくもない、ドス黒い記憶と一緒に。
「まいったな……苗字聞いてもまさかこことは思わねぇし……とりあえず……会ってみるしかねぇか」
頭を抱えて少し憂鬱に思いながらも、インターホンを押した。が、相手は出てこない。
「留守か……? 今日のこの時間なら居るって聞いたが……まぁ良いか」
心の準備も出来てねぇし……会うつもりもなかったし。このまま帰って依頼断るか。
そう思っていたが、帰ろうと家に背を向けた時に扉が開く音と男の声が聞こえた。
「……誰?」
「っ……!?」
後ろを振り向くと、一人の男が立っていた。そいつは俺の昔の記憶の中にいる家族の姿と重なった。
五年間この家で共に過ごした、血の繋がらない双子の弟の一人と。
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