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俺が七歳だった頃、俺と母さんは父親の暴力に苦しんでいた。
普通なら心休まる家が、俺達にとっては地獄みたいだった。
限界が来ると、母さんは俺を連れて家を出た。そして、双子の父親・和也(かずなり)さんと知り合った。
お互い離婚したばかりで子供も居て気が合い、すぐ仲良くなっていった。双子も俺と母さんに懐いてくれて、気付くとこの家に一緒に住んでいた。
それは五年だけだったが、俺の中では最高に幸せな時間だった。
ずっと続いて欲しかったが、母さんと和也さんは事故で亡くなってしまい、俺と双子は離れ離れになった。
この記憶は出来れば思い出したくねぇけど、弟の顔見たら嫌でも思い出しちまうな。てか……立派に育って、すっかり大人になったな。
俺の前に立つ双子の片割れと思われる男は、長めの黒髪に女みたいな綺麗な顔立ちだった。身形もきちんとしていて、爽やかだ。
ただ、俺を見る目は少し厳しい。まるで不審者を見てるみたいだった。
「誰……?」
「あ、えっと……今日から担当になる予定の……家政夫なんだけど……」
そう言うと、相手は俺をジロジロと眺めた。
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