恋心は勘違いだと思いたい

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「っ……!」  突然、戸惑っていた俺の首筋に顔を埋め、慶介はそこに強く吸い付いた。唇を放すと紅い跡が残って、慶介はなぞるようにそこを舐めた。 「おい、やめっ……!」 「中学の時に思った。周りのせいで兄としてあんたを愛せないなら……俺は恋人としてあんたを愛せば良い。例え、姿や性格が違っていても、そばに置ければそれでいい。そうしてあんたに対する感情がだんだんと変わった」 「っ……」 「あんたは俺のだ……」  何かがおかしいと思っていたが、こいつは何かが欠けていて、物の見方が歪んでいる。狂気染みたその感情に抗おうとした時、一階で物音がした。後に、微かに声も聞こえてきた。 「ただいま……慶介……?」  一階の宗介の声に気付くと、慶介の体は俺から離れた。俺の首筋には吸い付かれた感覚が残っていて、俺はそこを手で押さえた。 「もう帰ってきたか。……一応言っておくが……宗介にはしばらくあんたの正体も、恋人関係の事も黙っておく。担当になったから約束は守る」  「っ……ちょっ、待て! お前が弟ってわかった以上、俺はお前と恋人になるつもりねぇぞ!」 「あんたの気持ちは関係ない。俺が嫌だって言うなら……もう一回、体に教え込めば良いだけの話だ」  そのまま部屋を出た慶介は、階段を下りていった。  やっぱり、あいつはやばい奴だった……。  感情がグチャグチャで慶介に対する警戒度が上がった俺は、買い物から戻ってきた宗介の飯の誘いを必死に断り、桐山家から逃げた。
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