家庭の温かさは取り戻せるか

7/12
318人が本棚に入れています
本棚に追加
/140ページ
「あ、あぁ。いってらっしゃい」  二人を玄関のドアが閉まるまで見送った。  早く来て仕事をする事もあったから、出掛ける時に住人を送り出すのは慣れてる。でも、それが弟っていうのは今でも信じられない。  いつの間にか諦めていた光景が仕事で実現するなんて、おかしな話だ。 「俺は家政夫で、今更家族面も出来ねぇけどな。さてと……」  背中のリュックから掃除用の茶色のエプロン、マスク、使い捨てのビニール手袋を取り出した。鞄からは、俺が今まで買い溜めた掃除用洗剤各種を取り出す。 「ここまで汚い家は今まで無かったし……久しぶりに腕が鳴るな」  半ごみ屋敷となると業種が違う気がするけど、掃除は得意だ。  今日はやれるとこまでやってやる。  ─ ─ ─ ────  第一優先の浴室やトイレから取り掛かり、一階の母さん達の部屋にも時間を掛けた。昔の様に綺麗にしてから二階に移動した。 「そういえば……双子の部屋はまだ見てねぇな。確認するの忘れたけど、入っていいんだよな……?」  まずは恐る恐る、俺の正体を知っている慶介の部屋のドアを開けた。 「今のところ、やばいものはないな」  中に入って目に入ったのはスタイリッシュな机と椅子、少し整えられたベット。薄型のテレビと何かがびっしりと収納された棚だった。  机には、書類やファイルが乱雑に山積みにされている。
/140ページ

最初のコメントを投稿しよう!