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「あ、あぁ。いってらっしゃい」
二人を玄関のドアが閉まるまで見送った。
早く来て仕事をする事もあったから、出掛ける時に住人を送り出すのは慣れてる。でも、それが弟っていうのは今でも信じられない。
いつの間にか諦めていた光景が仕事で実現するなんて、おかしな話だ。
「俺は家政夫で、今更家族面も出来ねぇけどな。さてと……」
背中のリュックから掃除用の茶色のエプロン、マスク、使い捨てのビニール手袋を取り出した。鞄からは、俺が今まで買い溜めた掃除用洗剤各種を取り出す。
「ここまで汚い家は今まで無かったし……久しぶりに腕が鳴るな」
半ごみ屋敷となると業種が違う気がするけど、掃除は得意だ。
今日はやれるとこまでやってやる。
─ ─ ─ ────
第一優先の浴室やトイレから取り掛かり、一階の母さん達の部屋にも時間を掛けた。昔の様に綺麗にしてから二階に移動した。
「そういえば……双子の部屋はまだ見てねぇな。確認するの忘れたけど、入っていいんだよな……?」
まずは恐る恐る、俺の正体を知っている慶介の部屋のドアを開けた。
「今のところ、やばいものはないな」
中に入って目に入ったのはスタイリッシュな机と椅子、少し整えられたベット。薄型のテレビと何かがびっしりと収納された棚だった。
机には、書類やファイルが乱雑に山積みにされている。
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