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「良い机使ってんのに、上が残念だな。机は本人に整理させるか」
机の隙間を指でなぞり、埃がない事を確認してから後ろの棚を振り返った。よく見れば、映画のタイトルが書かれたケースがびっしり並べられている。
「映画好きなのかあいつ。そういえばガキの頃も五人で映画館行ったりしてたな……」
昔、休日は和也さんが俺達を外に連れ出してくれた。外食したり、遊園地や映画館に五人で出掛けたもんだ。
今の慶介にはガキの頃の可愛さは全然ねぇけど、昔の思い出なんかは大事にしてんのかもしれない。その証拠に、棚の下段には小学校の運動会や旅行のホームビデオのディスクが大事に保管してあった。
それを手に取ると、ぽつりと言葉が漏れた。
「何であーなったんだろうな……」
最初は俺と母さんを大事に想ってくれてただけなのに。
父方の親族や実の母親をあんなに憎んで、俺に対する気持ちも歪んじまって。気持ちに応えるつもりはねぇが、あのままにしとくのも問題だ。
「今は仕事するしかねぇか……」
一度部屋から出ると、一階に乱雑に放置されていた掃除機を引っ張り出して床を綺麗にした。
その後、俺は宗介の部屋の前に移動した。
「入って怒られないといいけどな。あいつ俺の事歓迎してねぇし……」
ドアを開くと家具は慶介の部屋のとだいたい同じで、机の上も同じ状況だった。
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