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双子の部屋と二階の廊下を掃除し終わると、昔俺が使っていた部屋が気になり、振り返った。
「出来れば掃除したいけど、やったら部屋に入った事がバレるよな。言う事はちゃんと聞かねぇと……」
ふと、今の自分は双子の家族ではないという事を改めて実感した。俺自身がそれを望んでいた筈なのに実感したらしたで、何故か胸が痛む。
兄って言う立場はとっくの昔に棄てたと思っていた。双子に会って、少しずつ兄心みたいなものが顔を出していたのかもしれない。
家政夫という立場なら、本来は家庭の事情に首を突っ込むのは御法度だ。今の俺は立場の境界線があやふや過ぎる。
「他人なら……双子の過去を詮索するべきじゃねぇんだよな」
理屈はわかるけど、もやもやする。
慶介の事もやばい奴とは思ってるけど、憎んでいる訳じゃねぇ。ずっと忘れられなくて双子には会いたいと思っていたけど、そんな資格がないとも思っていた。
感情とか、気持ちとか、思い出とか。いろいろとせめぎあってぐちゃぐちゃする。
「あーもうっ! 考えんな俺!」
俺は頭をガシガシ掻いて全部振り払おうと、一階に急ぎ足で下りていった。
─ ─ ─ ────
俺は仕事に没頭する為、一階廊下とリビングに少し手を付け、買い物に出掛けた。
今はキッチンに立っている。
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